シリーズ「グッド派遣レポート」

障がいのある方もどんな人にも活躍できる“居場所”を―株式会社クリーン&クリーン

株式会社クリーン&クリーンのここがグッド!

  • 多様な働き方ダイバシティ―を推進
  • 障がい者就労支援事業を独自で先駆け
  • さまざまな働く課題への取り組み

今でこそ障がい者の就労について一般認識が高まっていたように思います。2019年は初の国会議員が誕生したことで注目を集めましたが、多様な課題を持つ人が活躍できる環境への理解がより進んだ1年になったのではないでしょうか。
1976年の創業時から「人間尊重」を推進してきたのは宮城県仙台市に本社を置く東洋ワークグループ。中でも、25年前から障がい者雇用に取り組んでいた株式会社クリーン&クリーンは、パートの方のアイデアから生まれた、スーパーの買い物かごやプラスチックコンテナなどを洗浄するサービス会社です。代表取締役社長の猪又明美さんは、働くことに課題のある人たちの居場所づくりを進めてきました。仙台の東北工場では、25名のうち、8割を占める21名が障がい者の方が働いています。外部から見学 に来られた方も一様に驚くほどの仕事ぶりです。しかし、1993年の事業発足から障がい者雇用を想定していたわけではありませんでした。

猪又氏

障がいのある方にどう働いてもらえばいいの?

当時、東洋ワークグループの総務部長だった猪又さんに相談がありました。「社員の親戚で、知的障がいを持つお子さんが、仕事に就けずに困っている」福祉大学出身の猪又さんは、前向きに捉えられました。「クリーン&クリーンなら、何かできることがあるかもしれない」
とはいえ、現場からは懸念の声が挙がったといいます。1995年当時、採用も指導も経験がなく、どう接したらよいか、だれもわからなかったからです。そこで障がい者求職者雇用支援機構からジョブコーチに来てもらい、本人への職場適応支援や職員への指導助言を行ってもらいました。手探りと試行錯誤の日々ながら、同社の障がい者雇用はすぐに周辺に知れ渡りました。

受け入れ体制のある強み

ある時、障がい者施設の職員の方が訪れました。「うちの重度知的障がいを持つ男の子を働かせてもらえないか?自分が送り迎えと業務中の付き添いをし、本人を働けるようにしたい」という熱心な方でした。まずは実習生として通ってもらうと、次第に精神的に落ち着きをみせました。「民間企業でも、重度知的障がいの子の居場所を作れるんだ」とお互いに感じた手ごたえ。すると付き添っていた施設の方から、この会社で働かせてほしいと打診があり、正式に社員として迎え入れることになったのです。彼を訪ね、障がいを持つ方の入社が急増すると、当初は戸惑いのあった社員のみなさんとも協力体制が整いました。2008年には、東洋ワークグループ全体の障がい者雇用を請け負う「特例子会社」として設立できるほどに定着しました。

作業が早く品質が高い生産性

実はこの洗浄会社、収益の出づらい事業でした。同社の代表となった猪又さんはみずから現場に入りながら一つずつ工程を確認し、業務改善に取り組みました。詳しく見てみると、障がい者の担当部門が大きな利益を生んでいることがわかったのです。スーパーのかごやコンテナの洗浄は、単純作業ながら人の手が必要です。障がい者は黙々と自身の作業に集中し、品質が高くて早い。一方で健常者の部門ではなぜか人が定着せず、余計に経費がかさんでいる結果でした。猪又さんは障がい者の居場所づくりに自信を強めたといいます。
現在は、仙台だけでなく札幌や、請負事業として埼玉、神奈川、千葉、大阪など8拠点を展開。「声がかかればどこでも立ち上げに行きます。そうすることによって、地方に働ける場所を作ることができる。安定させるまでは大変ですが、障がい者さんの居場所づくりが一番の大きな目的なのです」と猪又さん。今期売上8億円、利益1千万円を目指して取り組んでいます。

集合写真

働くことに課題のある人が活躍できる場所

障がい者雇用のノウハウによって、働くことに課題のある人たちにも手を広げることができました。例えば、優秀なスキルを持ちながら小さな子どもを預けられないママさん。生活保護家庭の10代の女性は土日のアルバイトからやがて正社員となり、生活保護から脱することができました。就労困難者の就労実績も多く出てきています。60代の女性は、親の介護を終えて寝かしつけてからの19:30からが勤務時間。月数万円の自由になるお金ができ、精神的ゆとりができることで喜ばれているといいます。
また同社は、刑務所出所者等を受け入れる保護観察所の協力雇用主でもあります。仕事による自立を支援し、再犯防止できる取り組みです。26歳の男性は入社4年目で現場のリーダーを任されるまでになりました。58歳の男性は、働くことで生かされていること、やりがいに気づき、お金を貯めてアパートを借りて生活できています。

安心して自分を生かせる“居場所”

リモートワークやシフト勤務をうまく組み合わせながら、その人の持つ課題に合わせた働き方を一緒に考えていく。そのためには、一人ひとりとじっくり向き合う必要があるといいます。「この子のできるところって何だろう」と会話をし、作業をみながら、トライアンドエラーで潜在する力を見つけ、安心してできる仕事を与えるのだそうです。誰にでもあるできること、できないこと、ストレスになることを見極めた“適材適所”、そこが人の個性を活かす居場所となるのです。
“居場所”とは、心を許せて安心して働ける場所、生かしてくれる場所だと猪又さん。「人材会社である以上、能力の高い人と企業とのマッチングはあたりまえ。私たちは働き方に課題のある人を理解し、お互いに納得性のある中で仕事をできるよう結びつけることが役目ではないかと思います。企業にも歩み寄っていただく働きかけが必要です。」

「障がいって、才能」と猪又さん。多様な数だけキラリと光る強みがある。一般的な就労では発揮されにくい才能も、生かせる場が見つかることによって、社会に大きな価値をもたらす可能性があるのです。すべての人が活躍するダイバシティ社会は、私たちの想像を超える価値の高い社会なのかもしれません。

Interviewee

代表取締役社長 猪又 明美氏

企業概要

株式会社クリーン&クリーン

  • 設立: 1993年(東洋ワーク株式会社より特例子会社として分社)
  • 代表者: 代表取締役社長 猪又 明美
  • 本社東北工場:〒980-0013 宮城県仙台市宮城野区中野4-2-38
  • グループ会社:東洋ワークグループ
  • オフィシャルサイト http://www.toyowork.co.jp/cc/index.html

事業内容

プラスチック製品の洗浄及び委託事業 (オリコン・買物カゴ・パレット・トレー・リーフ等)
買物カートの清掃・修理

この記事の著者

AsanoAkira

AsanoAkira

大学卒業後、大手住宅メーカーに3年勤務したあと、さまざまな社会を経験したく派遣社員として6社を渡り歩く。景気悪化による失業を経験したことも。6社目の経営コンサルタント会社で一般事務からコンテンツ制作業務に転身。以降、直雇用での約12年間は、企業経営の現場で経営事例などのべ200人以上の取材執筆、編集に携わり、「経営は人。人生そのもの」と知る。現在はライフコーチなどを通じて、100年人生を思い通りに動かしたい人たちと未来創りに参画している。
詳しくは「ライター紹介」ページをご覧ください。

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